哀悼

江島と彼とは20年来の仲間でした。 共に「なないろ*クリップ」の中心メンバーとして制作の陣頭指揮をとっていましたが、彼は志半ばでこの世を去りました。 余命宣告を受けた後も本作の完成を誰よりも待ち望んでいた彼はもうこの世には居ません。 彼亡き後の数日間、開発室にキーボードの音はせず、灯りが付くこともなく、スタッフは顰めた顔を見合わせるばかりでした。 良い作品を残すことが何よりの供養とわかってはいたのですが突然の訃報に戸惑い、なかなか物語のようには行かない現実でした。 そうして、ここに来てやっと気持ちを切り替えることができました。 数々の作品を通して様々なエンタメに影響を与え、実績を多々残し旅立った彼はまさに情熱家そのものでした。 プロット会議の時も星見ヶ島でなないろクリップのメンバーに会って来たかのように真顔で語り、キャラ像をまくしたて、キャラデザの桜東が悲鳴をあげるような一幕もありました。 ファミレスで、次回作のコンセプトで議論になり、気付いたら、空が白けてきた時、 オタクということにプライドをもち、二次元文化を堂々と語った酒宴の席、 ディーオーの制作陣として共に戦った日々、 そして時は流れ、実績も充分築き上げた彼は後進スタッフの偉大な道標ともなりました。 彼の人生はあまりにも短く、幼な子を残して逝ってしまった彼を思うと言い足りなかったこと、やり残したことが山ほど有るのではと心が痛みます。 今は只々冥福を祈り、本作の完成を機に彼の功績にディーオーとして何か報いる事が出来ないか考えつつ、彼の掲げた理想を実現することに邁進したいと思います。

2016年5月 ディーオー 佐藤健次